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eVTOLはいつ実用化する? 試験飛行・型式証明・商用運航の違いをやさしく解説

eVTOLのニュースには、「初飛行に成功」「型式証明を申請」「商用化を目指す」といった言葉が並びます。しかし、一度飛べたことと、乗客を乗せて営業運航できることは同じではありません。この記事では、国や機体による制度の違いに注意しながら、それぞれの段階が何を示すのかを見ていきます。

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この記事のポイント

  • 電動垂直離着陸機(eVTOL)が試験飛行に成功しても、それだけで乗客を乗せる商用運航を始められるわけではありません。 1, 2
  • 型式証明は、一度の飛行結果ではなく、機体の設計が安全基準に適合しているかを当局が確認する手続きです。 1, 3
  • 機体の認証とは別に、運航会社、操縦士、整備、運航規程、離着陸場所、空域などの準備が必要になり得ます。 4, 5
  • ニュースを読むときは、「飛行成功」「認証申請」「認証取得」「商用運航開始」を分けて見ることが大切です。 1, 6

eVTOLと電動航空機、空飛ぶクルマ、先進航空モビリティ(AAM)の用語の違いは、「eVTOLとは何か」で詳しく整理しています。

この記事について

この記事は、個別企業の実用化時期を予測するものではありません。eVTOLが構想から試験、認証、商用運航へ進むまでの一般的な流れを説明します。制度や審査方法は国・地域、機体の設計、予定する運航によって異なります。米国ではFAA、欧州ではEASA、日本では国土交通省など、それぞれの当局と法制度に沿って確認する必要があります。 7, 6, 3

また、すべてのeVTOLが米国の「powered-lift」という分類に該当するとは限りません。本記事でFAAの資料を紹介する箇所は、主に米国でpowered-liftとして扱われる機体についての説明です。ほかの国や異なる設計へ、そのまま当てはめることはできません。 7, 4

なぜ重要なのか

ニュースの「飛んだ」という短い表現だけでは、どの段階まで進んだのかが分かりません。縮小機による飛行、無人の試作機による飛行、有人試験飛行、当局が関与する認証試験では、確認している内容が異なります。試験飛行には、通常の耐空証明を受けた商用機とは異なる手続きや飛行条件が適用される場合もあります。 2, 1

同じように、機体設計の承認と、個別に製造された機体の状態の確認、運航事業者の許可は別の論点です。日本の国土交通省も、型式証明と耐空証明を異なる証明制度として説明しています。有償で旅客や貨物を運ぶ航空運送事業には、さらに事業の許可、運航規程・整備規程などが関わります。 3, 5

eVTOLが実用化するまでの大まかな流れ

実際の順序や、並行して進める範囲はプロジェクトごとに異なります。次は、ニュースを理解するための大まかな見取り図です。

1. 構想・設計

想定する用途、飛行範囲、乗員数、推進方式、安全設計などを検討します。認証当局と、適用する安全基準や適合性を示す方法について調整する場合もあります。 1, 6

2. 地上試験

構造、推進系、バッテリー、制御、ソフトウェアなどを、部品、装置、機体の各段階で確認します。地上試験を始めた時点では、飛行できることや設計全体の適合性が確認済みとは限りません。 1

3. 無人または遠隔での試験飛行

試作機を無人または遠隔操作で飛ばし、飛行特性や制御を確認する開発があります。ただし、すべての機体が必ずこの段階を同じ形で通るわけではありません。 2

4. 有人試験飛行

操縦士が搭乗して、定められた条件の下で飛行特性や操作、手順などを確認します。有人飛行の実施は重要な試験段階ですが、設計の安全性確認がすべて完了したことを示すものではありません。 2, 1

5. 型式証明の審査

設計が適用される基準に合っていることを、試験、解析、書類などで示します。審査は一つの試験だけで終わらず、設計の定義や適合性確認を含みます。 1, 7

6. 製造と個別機体の認証

承認された設計と同じ品質で製造できる体制や、実際に製造された個々の機体が安全に飛行できる状態かを確認します。型式証明と、個別機体に対する耐空証明は同じものではありません。 1, 3

7. 運航に必要な許可・人員・設備の準備

運航事業者、操縦士、訓練、整備、運航管理、マニュアル、離着陸場所、空域との調整などを準備します。必要な許可や要件は、国、運航形態、機体によって変わります。 4, 8, 5

8. 商用運航

必要な機体・運航上の承認と体制を整えたうえで、有償の旅客・貨物輸送などを始めます。ある地域で運航を始めても、別の国や地域で同じ承認が自動的に得られるわけではありません。 5, 4

機体方式や、ホバリングから翼を使う巡航へ移る遷移飛行については、「eVTOLはどう飛ぶ?」で解説しています。どの飛行形態まで試験したのかを確認すると、開発ニュースの意味をつかみやすくなります。

型式証明とは何か

型式証明は、航空機の型式、つまり設計が、適用される安全性や環境に関する基準へ適合しているかを航空当局が確認する制度です。FAAの説明では、設計の審査、適用基準と適合方法の合意、地上・飛行試験、書類確認などが認証過程に含まれます。単に機体が一度飛べたことを認める制度ではありません。 1, 7

日本では、国土交通省が型式証明を航空機の「型式の設計」に対する証明として説明しています。一方、耐空証明では個々の航空機について、設計、製造過程、完成後の状態を確認します。型式証明を受けた型式では、耐空証明の検査の一部を省略できる仕組みがありますが、型式証明が個別機体の耐空証明そのものになるわけではありません。 3

「型式証明を申請」と「取得」の違い

「型式証明を申請」は、申請者が当局へ手続きを始め、認証の枠組みや適合性の示し方を調整しながら審査を進める段階です。申請したという事実だけでは、すべての試験を終えたことや、設計が基準へ適合したことを示しません。 1, 7

「型式証明を取得」は、定められた審査を終え、その型式設計が適用基準に適合すると当局が認めた段階です。ただし、その後も製造、個別機体、運航に関する承認や準備が残ることがあります。申請日や企業が示す目標時期だけから、商用運航の開始日を確定することはできません。 1, 3

機体が認証されても、すぐ営業運航できるとは限らない

型式証明は機体設計の承認です。乗客や貨物を有償で運ぶためには、運航する組織と日々の運航を安全に続ける体制も必要です。たとえば、次の準備が別に関わります。

  • 運航会社側の事業許可や安全管理体制
  • 操縦士の資格、機種ごとの訓練、技能確認
  • 機体と装備品の整備体制
  • 運航規程、整備規程、緊急時を含むマニュアル
  • 離着陸場やバーティポートの施設と運用
  • 空域、航空交通、気象条件を踏まえた運航ルール
  • 国や地域ごとの制度、自治体や地域との調整

日本では、有償で旅客や貨物を運ぶ航空運送事業に国土交通大臣の許可が必要です。また、運航規程と整備規程の認可、運航管理施設などの検査も制度として分かれています。米国でもFAAは、powered-liftの機体認証、操縦士の資格、運航規則、事業者の認証を別の論点として整備しています。 5, 4

離着陸場所についても、機体が着陸できる広さだけで決まるわけではありません。施設の設計、進入・出発経路、既存の空港・ヘリポートとの関係、地上での安全な運用などを検討する必要があります。 8, 9

ニュースでよく見る言葉の違い

ニュースの表現実際に意味することその時点でまだ必要になり得ること
機体を公開外観、設計案、試作機などを公表した段階です。地上・飛行試験、設計確定、認証審査、製造・運航準備などが残る場合があります。
地上試験を開始構造、推進、電源、制御などを地上で確認し始めた段階です。 1飛行試験、認証に必要な追加試験・解析、設計変更などが残る場合があります。
初飛行に成功その試作機が、特定の条件と飛行範囲で初めて飛行したことを示します。飛行範囲の拡大、異常時を含む試験、認証審査などが残る場合があります。 2
有人飛行に成功操縦士などが搭乗した試験飛行を実施したことを示します。有人での追加試験、設計適合性の確認、運航準備などが残る場合があります。 1
型式証明を申請機体設計の認証手続きを開始し、審査過程に入った段階です。基準・適合方法の調整、試験、解析、書類審査などが残ります。 7
型式証明を取得型式設計が適用基準に適合すると当局が認めた段階です。製造承認、個別機体の耐空性、運航事業者・人員・施設の準備などが残る場合があります。 3
運航事業に必要な許可・認証を取得特定の国・地域、事業者、運航内容について必要な許可や認証を得た段階です。必要な手続きの名称や範囲は制度によって異なります。機体認証、操縦士資格、施設、路線など別の条件を満たす必要がある場合があります。 5
商用運航を開始必要な承認と体制の下で、有償の運航を実際に始めた段階です。継続的な整備、訓練、安全管理、当局の監督が続きます。 5

表の各段階は、必ず一直線に一度ずつ進むとは限りません。試験結果に応じて設計へ戻ることや、認証と運航準備を並行して進めることもあります。「商用運航まで近い・遠い」と単純化せず、何を終え、どの手続きが残っているかを確認するほうが実態をつかみやすくなります。 1

日本ではどのような準備が必要か

日本でも、機体の安全性、操縦者、運航、離着陸場所、空域は別々に確認すべき論点です。国土交通省の試験飛行ガイドラインは、試験飛行の内容に応じて、航空機、操縦者、飛行場所や高度などに関する航空法上の手続きを整理しています。試験飛行を実施できたことは、そのまま型式証明の取得や有償の商用運航を意味しません。 2, 3

運航事業では、事業計画、安全管理、運航規程、整備規程、必要な施設や人員などの審査が関わります。離着陸場、空域、航空交通との調整も、機体設計だけでは解決しない課題です。 5, 9

さらに、国土交通省と経済産業省が設置した「空の移動革命に向けた官民協議会」では、機体・運航の安全基準だけでなく、離着陸場、事業制度、社会受容性なども検討項目として扱われてきました。ここで示されるロードマップや事業者の計画は、個別機体や運航サービスの承認そのものではありません。制度の最新状況は、ニュースの日付と、その時点の公式資料を確認する必要があります。 9

ニュースを見るときのチェックポイント

  • 飛行した機体は実物大ですか、それとも縮小機ですか。
  • 無人・遠隔飛行ですか、それとも操縦士が乗る有人飛行ですか。
  • ホバリングだけですか。それとも巡航や遷移飛行を含みますか。
  • 当局が関与する認証試験ですか。それとも企業独自の開発試験ですか。 1
  • 型式証明の「申請」ですか、それとも「取得」ですか。
  • 機体設計や個別機体の認証ですか。それとも運航事業者に対する許可ですか。 3, 5
  • 実証実験ですか。それとも利用者が料金を支払う商用運航ですか。 2
  • 計画や承認の対象となる国・地域はどこですか。

このチェックポイントを使うと、「飛行成功」という一言の中身を具体的に確認できます。特に、どの機体で、誰が乗り、どの許可と飛行条件の下で、何を試したのかを見ることが大切です。 1, 2

まとめ

eVTOLの実用化を考えるときは、「飛んだ」「認証された」「営業を始めた」を分けて読む必要があります。試験飛行は開発上の確認、型式証明は設計の適合性確認、耐空証明は個別機体に関する確認、運航事業に必要な許可や認証は事業者や運航体制などを確認する手続きです。それぞれが重要ですが、一つを終えただけで、ほかの段階まで完了したことにはなりません。 3, 5

「いつ実用化するか」は、企業が示す目標年だけでは判断できません。ニュースでは、完了した試験や取得した承認の正式名称、対象国、残る手続きを確認すると、進み具合を落ち着いて理解できます。 7, 6

参考資料

  1. How Does the FAA Certify Aircraft? — Federal Aviation Administration(en)本文へ戻る
  2. 「空飛ぶクルマ」の試験飛行等に係る航空法の適用関係のガイドライン — 国土交通省(ja)本文へ戻る
  3. 航空機及び装備品等に対する証明制度 — 国土交通省(ja)本文へ戻る
  4. AC 194-1: Powered-Lift Operations — Federal Aviation Administration(en)本文へ戻る
  5. 事業計画審査要領(安全関係) — 国土交通省(ja)本文へ戻る
  6. Special Condition VTOL — European Union Aviation Safety Agency(en)本文へ戻る
  7. AC 21.17-4: Type Certification—Powered-lift — Federal Aviation Administration(en)本文へ戻る
  8. Advanced Air Mobility Infrastructure — Federal Aviation Administration(en)本文へ戻る
  9. 空の移動革命に向けた官民協議会 — 国土交通省(ja)本文へ戻る

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